をれをずブログ

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「生きていたくない」の話をしよう

生きていたくない

 生きていたくない。自殺願望に疎い生存主義の読者に説明すると、これは「死にたい」のことだ。しかし、死にたいと言うと、「死ぬ勇気もないくせに」だの「死にたいは生きたいの裏返し」だの訳の分からない厄介な絡みが発生するので、生きていたくないと表現している。

 気を利かせて「自殺したい」という表現を使うこともあるが、こちらも同様に「自殺する勇気もないくせに」「自殺することなく死の状態がほしいんでしょ」と面倒な指摘を受けてしまう。そこで「生きていたくない」の出番だ。自発的に死ぬような度胸がなく、しかし生きている状態を維持したくない、という希望を的確に表現できる奥ゆかしい日本語が「生きていたくない」なのだ。

なぜ生きていたくないのか

 この現象は幸福と苦痛のバランスで説明できる。

 正常な人生を考えると、これは幸福と苦痛が普通の量であり、バランスが取れた人生である。このバランスを保ったまま、幸福と苦痛を共に多くすると激動の人生になるし、共に少なくすると安定した落ち着いた暮らしになる。しかし、これらは共にバランスの取れた正常な状態である。

 幸福と苦痛のバランスが崩れたものが、異常な人生である。異常な人生は、観測できる限りでは苦痛過多もしくは幸福過小によって作られる。苦痛過多もしくは幸福過小な人生においては、人生の実行者はあまりに大きな苦痛に耐えきれず、あるいはあまりに少ない報酬に絶望し、生存の意欲を失う。

 たとえば、コンビニバイトをして時給10円だったら誰でも働きたくないものだろう? それと同じで、人生をしても幸福が少なすぎれば続けたくもなくなるものだ。

楽しいことがない

 私は基本的に後者、幸福過小だという人生認識を持っている。理由を挙げればきりがなく、カードゲームのデッキを構築できる勢いだが、中でも切り札は「楽しいことがない」であり、発動に成功すると死にたみカードバトルに無条件で勝利する。

 「楽しいことがない」の発動条件は、プレイヤーに何一つ楽しいことがなく、かつ、そのような過去の経験から、未来においても楽しいことが期待できないことを帰納的に知り、希望を手放した状態でターンエンドすることである。

自殺したい

 前の二項を踏まえると、一旦いろいろな不安を無視すれば、当然、自殺したいと思われる。すると、いつどのように自殺するか、ということが問題になる。

 まず、「いつ」という問いについてだが、思うに選択肢は2つあり、今このあたりで死ぬか、あるいは30~40歳程度に死ぬのが良いと考えている。

 人生の目的は、正常な人生においては幸福の最大化であるが、異常な人生においては苦痛の最小化となる。異常な人生では、基本的に幸福は期待できず、しかし苦痛は時間経過に従って増大していくため、原則としてできるだけ早く人生を終えるのが最適解となる。

 また、異常な人生を与えられた身として、少なからず社会に対して不満や憎悪を抱いており、当然、復讐したいと思われる。しかしながら、生存主義者個人にはなるべく損害を与えたくないという程度の良識は備えており、大々的に報道されるような無敵の人の典型的な復讐は避けたい。すると、扱える中では、自殺が最も強力な武器となるため、自殺を通して社会に復讐するのが良いだろう。

 しかしながら、こんな人間、無敵の人になるような人間は、死んだところで社会に何も損害を与えられない。そもそも無能であるし、これから人生を続けたところで、日々新たな無能が露呈するだけで、社会に役立つことはない。そのようなことを考慮すると、だらだらと生き長らえるよりも、今、学生として将来を期待されているうちに自殺するのが、一番価値があるように思われる。そうして、有望な若者の自殺が社会に損失を及ぼしたと錯覚させることが、社会に対する復讐のうち、無能にできる一番のものであると思われる。

 次の局所解である、30~40歳程度で死ぬルートだが、これは人生の後半を切り捨てて前半にエネルギーを集中させ、それによって苦痛に勝る幸福を得るという挑戦的なルートである。後半戦を考えなくて良いため、仕事の将来性やキャリアプランなどを無視でき、人生を有利に進めることができる。このルートの欠点は、やはり幸福を獲得するのが非常に困難であること、また、運良く幸福を獲得できたとしても、体力的に40歳程度が限界になりやすいことである。

 さて、もう一つの問い「どのように死ぬか」に対してだが、どのように、と言われても、なるべく死に損なう危険がなく、なるべく痛みと恐怖のない方法、というほかにない。実現は難しいが、安楽死が理想だろう。

安楽死

 結局、人は簡単に死ねない。死ぬのが怖い。一番怖いのが、自殺に失敗すること。自殺に失敗し、いまよりも惨めな人生が発現し、次なる試みが阻まれることが、何より怖い。あるいは、万が一、死後の世界や魂のような超越的なものが存在して、自殺が自分に何か大きく永久的な不利益をもたらすことが怖い。

 安楽死。「安らかに」「楽に」「死ぬ」。こんなに良い三文字が並んでいるのだから、きっと良い性質をもっているに違いない。雪月花の仲間ということも考えられる。

 

 

美しい物を見ながら死にたいのならば、水中都市に攻めこめばいい。

シーマイン DM-01