はっきり言って人生はオワコンだ。
第一に苦しすぎる。第二に幸福が無い。第三に納得感に欠ける。理由は百八式まであるが、もう十分だろう。
人生は素晴らしいものだ、といろんな人がいろんな喩えで同じことを言っている。初めて聞いた時はハッとして、真摯に生きよう、などと思うが、後になって考えてみれば、人生はそんな大層なものじゃないと分かる。人生に美しい比喩は似合わない。人生は苦痛の連続だ。
親が生んでくれた身体を大事にしろだの、生まれてきた奇跡がどうだのと、そういう類の話も後をたたないが、まったく、押し付けがましい、恩着せがましいったらありはしない。誰が産めと頼んだ。誰が造ってくれと願った。地獄に落ちるのは嫌がるのに、どうして生まれ落ちるのがありがたいのか。
人生なんて無益なものは、さっさとやめてしまったほうがいい。死ぬまで足掻いて損し続けるより、今までの損を受け入れて切り上げてしまった方が得だ。あるかも分からない一縷の望みにかけて歩き続けるなんて、どんなギャンブルより酷い。人生依存症でないのなら、今すぐ引退をオススメする。
それでも、もう何年も一緒に苦しみ続けた仲だ。自分は自殺などできる人間ではないと嫌でも分かる。この先もこうして文句を垂れながら惨めに生きていくのだろう。「大学キモすぎ!」「人生カスすぎ!」と、死ぬまで真顔でTwitterに打ち込み続けるのだろう。
ふと考えることがある。今や人生80年時代。この先60年もこの延長線上で生きるとしたら?──それはあまりに、苦しすぎる。
だとしたら、考えなければならない。自殺はできない。生まれ持っての環境も親の財産もない。だけど、その中で生きる術を。苦しみを緩和する方法を。幸福を手にする方法を。考えなければならない。
今までの搾りカスみたいな人生に、最悪な繰り返しの日常に決別し、新しい人生に出会う。起き上がれずに天井を眺め続ける朝(昼)や、虚ろな目でタイムラインを撫で続ける夜はそこにはない。「だれも苦悩や悲しみに途方に暮れず、毎日みんなで楽しく過ごしたり幸福を味わったりして1日がおわるマジで楽しい人生」という意味を込めて、新しい人生を「人生2(ツー)」と名付けよう。
どうしたら人生2に移行できるだろうか。You Tubeの広告は、「人生を変えたい、そんなあなたに朗報です!」などとしょっちゅう言ってくれるが、この手のものはまずダメだ。脱毛はたしかにしたいが、人生が限界な人間はもっと先にすべきことがある。それにYou Tubeは、「超高級メンズ人生『人生2(ツー)』がなんと980円で体験できちゃうんです!」などと広告してはくれない。
思うに、人生2は脱毛、洗顔、スキンケア、といったものの先にあるものではない。むしろ、人生2の先にそういったものが選択肢としてあるのだと思う。いや、そうじゃない。マーケティングをしたいわけじゃなかった。俺の抱える問題は、もっと深く、根本的なところにある。
まずは問題を明らかにしよう。これは簡単だ。自分を二人用意して、一人に尋問、もう一人に言い訳をさせればいい。言い訳は得意だ。任せてくれ。
ねぇねぇオタクくん。オタクくんはなんで苦しいんでちゅか?
──時間がないからだ。やりたいことをやる時間がない。
じゃあ、時間があればいいんでちゅか?
──それは違う。一人ではできないタイプの趣味なんだ。だから時間だけがあっても虚しいだけだ。
なるほど。仲間を見つけられればいいんだね?大人のくせに、満足にコミュニケーションも取れないオタクくん……。で、なら友達と普通に遊べば?
──積極的に関われる友達が、いない
コミュニケーションに難あり、っと……。
まとめると、問題は主に2つ。時間的余裕がないこと。人と積極的に関われないこと。この2つだけ。なんだ簡単そうじゃないか。問題が分かれば、あとは解決するだけ。さあ、人生2へ引っ越しの準備を始めようか。