をれをずブログ

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椎間板ヘルニア奮闘記2 ブロック注射編

※2から始まってるのは仕様で、気が向いたら1を書きます(昔配信で話した内容です)。

 色々あって腰椎椎間板ヘルニアを患っている。治療のため、紹介状を持って隣町の大きな病院へ行った。
 MRIとレントゲンのデータを持っていったので話はとんとん拍子で進み、当日、神経根ブロックを打って痛みの原因を確認し、そして二日後に投薬をすることになった。予約はなかなか取れなかったが、しかし取れたらすごいスピード感だ。神経根ブロックは、背中から出た神経に直接麻酔薬をぶちこんで痛みを遮断すると同時に、痛みが取れていればそこが原因だと分かる、という対症療法兼診断の処置。投薬は、ヘルニコアという新しめの治療薬を使う。椎間板の水分を酵素で分解し、収縮させる薬だ。
 診察からはめまぐるしく過ぎていった。コルセットの型を取り、その後、入院のための検査が始まった。投薬治療のために、入院することになったのだ。心電図を撮り、次に採血。検査待ちの人の多さに絶句した。溢れんばかりの人、というか溢れてる。区画から大きく溢れた人に、大量の車椅子。改めて気をつけようと心を引き締めた。
 機械で採血の整理番号を受け取る。私の受付まで百人余りあった。処理能力のあまり高くない採血の待ち行列。一時間くらいかかりそうだ。区画から出て、空いてる席を探し、一息つく。
 持て余した時間で神経ブロックについて調べた。「神経ブロック 体験談」などと検索すると、「仰反るような痛さ」「肘の神経を椅子にぶつけたビリビリ」などと出てきた。仰反るような痛さ……。診察時、神経根ブロックって痛いですか、と聞いたらニヤッと笑って「痛いですよ」と医者が言ったのを忘れない。「神経に針を刺すんだから、これは痛いですよ。」
 やはり一時間ちょっと待って、採血の順番になった。採血は苦手だ。はじめに腕を縛られる。針よりも血を止めるのが気持ち悪い。しかし、針がちくっとして、やはり針も嫌だな、と思った。
 血を抜かれたら、なんだか気分が高揚してきた。しかし針というのは、抜いた後もちくっとして面白い。あんな細い針や傷を認識できるなんて、人間のセンサーはよくできている。でも、針がチクっとで済むくらい鈍いセンサーで良かった、とも思う。全身の感覚が無茶苦茶鋭敏な宇宙人が「全く鈍い種族め! 我々の方が感覚が鋭い上位存在だ!」とか言ってきても何も羨ましくない。もうちょっと鈍くありたいくらいだ。

 諸々が終わり、遂に神経根ブロックの時が来た。検査着に着替え、点滴を刺され(とても嫌だ)、車椅子で運ばれる。神経根ブロックは、脊柱管から出る神経の根本に針を刺すため、X線透視下で行われる。検査台、いや今は手術台か、の上に乗り、うつ伏せになる。背中の真ん中より少し右側から、針を狙う。
 麻酔はちくっとするくらいだった。これはみんな知ってるか。本命の針も最初は同じようにちくっとした。その後ぐっぐっと、針で押されるような痛みが続いた。体の内部を探られるような、押されるような感覚。痛みで息が漏れる。十秒か、三十秒くらいか。針が神経に達すると、信じられない痛みがした。右足全体の神経が張るような、足全体が攣るような、全部の筋肉を限界を超えて総動員しているような感覚がずっと、一律に続く。仰け反る痛みというより、強制的に仰け反らされているような感覚。声を上げずにはおれず、「これやばいです」と連呼した。針先が神経に刺さっているのみだが、しかし、神経の根本から先端まで串刺しにされているような心地がした。
 五秒か十秒かした後に麻酔が注入される。麻酔を注入して一秒かその半分かくらい経つと、すごく重い感覚の後に、痛みがすうーっと消えていき、ずしりと足が重くなった。魔法のような感覚に、「お〜これすっごい」と言ったら笑いが起こった。
 力みすぎたのか、点滴が逆流して管が真っ赤な液体で満たされており、「わーお」と聖園ミカになったが、即座に、これは問題ないですからね、と王子様のお付きに返された。
 診察室で横になり、点滴を睨む。やはり点滴が一番嫌だ。ずっとじんわり痛い。いや冷静に、血管に管通すなよ。頭がおかしい。

 しばらくして、気分が落ち着いた。全身穴だらけだな、と思った。

 帰り道、書きなぐったメモを整理しようと思っていたが、全然気が乗らず、適当にTwitterを見て時間を潰した。検査前は執筆が本当に捗る。終わるとダメだ。検査前の緊張感と嫌悪感が丁度良い。作家は常に検査すべきだ、と思う。一日五回くらい採血したらいい。
 結局、家についたのは五時近くであった。望まない一日仕事にため息が出る。


次回、ヘルニコア編(予告)